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Romance夢紀行

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LOVER MINE あらすじ BDB#8(後編)

第42章 グレッグは屋敷が寝静まると、眠るホリーを残して3階に上がっていきました。廊下にはランプの明かりがともされ、そこの椅子に大男が座っているのが見えました。エリヤフー・ラズボーンにそっくりな彼は、自分はこの屋敷の持ち主だと告げます。お前はホリーを大切にしろ。もうちょっかいを出したりしない。後悔している様子からして彼女の大切さに気が付いたんだろう? バイバイ。最後に見えた彼のこめかみの傷は・・・部屋に戻ったグレッグはもう何があったのか覚えていませんでした。

第43章 ダリウスはトールをつれて隣の館を調べにいきます。台所から侵入し、足音をひそめながら、明らかにヴァンパイア風ではない屋敷のなかを進み、娘が監禁されている可能性が高いと考えた地下に進んでいきます。屋敷には警戒心を呼び起こし身体を緊張させるなにか嫌な気配が漂っていて、トールを見ると冷や汗をかいています。ワインセラーを抜けると、壁しかない場所にきて、隠し扉などがないか、かがんで調べて「ここに彼女はいないのかもしれない」というと、「その通り」後ろから通路をふさぐ形で白い衣装のシンパスが現れました。

第44~45章 ゼックスのなかの復讐を求める心は、ジョンへの心配で吹き飛んでしまいました。彼のような男性が内面の檻を突き破って獣のようになってしまうなんて。伴侶にちょっかいを出されたからだ。監禁後に再会してから、ジョンから漂うよい香り・・・。なんてことだ。

トールがラシターと現れ、大丈夫かと声をかけてくれます。ゼックスはジョンの部屋の窓を壊してしまったので、材料を貸してもらえれば直してくると申し出ますが、トールは気にしなくていいと言って姿を消します。ゼックスが床にしゃがみ込み、膝を抱えて眠ってしまうと、トレーニングをしていたブレイがまだジョンはシャワーから出てこないのか、あれから1時間は経つのにと声をかけてきます。困ったら声をかけてと言われて、ゼックスはジョンを探しにいきます。ジョンは冷たいシャワーに打たれて、床にしゃがみ込んでいました。手術室でのゼックスの精神状況同様に、ジョンも限界でした。

彼女はシンパスの本能でジョンの精神のなかに入り込み、彼が変化前に乱暴されたこと、ラッシュにやられたことを読み取ります。なんてことだ。彼は過去の不幸な出来事は現在と切り離すことで精神的に安定を保っていたけれど、トラウマもそのままになっているから両方の出来事が感情的に交差すると傷が表に出てきてしまう。ラッシュが自分も彼女も傷つけたことで二重の復讐心を抱いているんだ。ジョンの目がゼックスを見返してきて、彼らの精神のあいだには何の障壁もなくなったことが感じられます。こんなことが自分に起こるとはゼックスは思ってもみませんでした。ジョンを見つめていると、彼を欲しいという気持ちがわきあがってきて、彼女の匂いにジョンはすぐ反応しました。私たちの精神はもう結合しているんだから、肉体も同じようにしたいと誘います。ジョンの感情を読み取ると、お前は勘違いしているよ。お前にされたことでお前が半人前なんてことはありえない。お前は生き延びたんだから、人の二倍の価値がある男だ。ジョンは人生には何が起こるかわからない。ゼックスに知られたら軽蔑されると思っていたのにと思います。ドアを椅子でふさいで、二人は愛を交わし、ゼックスはジョンの名前を叫び、ジョンはゼックスから身を養います。彼の匂いはゼックスにしみ込んでいきました。

ブレイはサクソンがしてくれた甘いキスを思い出し、迷いながら指が動き電話してしまいます。サクソンは電話に出たものの、様子が変です。家にいるが、といって事情を話さず電話を切られてしまったので、ブレイは急いでVのところにって携帯の番号で住所を調べてもらいます。あっという間に調べてくれますが、飛び出そうとするとあと25分で日の出だぞと立ちふさがれます。だから急がないといけないんだ、というと急いですませるか、日中は戻ってこれないと思えと言われます。サクソンが咳をしながらここで何をしているんだとドアを開けてくれますが、血の匂いをかぎ取ったブレイはドアを押し開け、部屋に入ると彼は怪我をしていて身動きするにも痛みをこらえている様子です。別れた後、あのシガーハウスに戻ってひと悶着あったようです。

第46章 ダリウスとトールメントはシンパスからゲストのように屋敷の入口から送り出され、ダリウスは自分の小屋にトールメントを連れていきます。ダリウスにとっては初めての客でした。いつかまた実家のようないくつもの部屋のある大きな家で、守るべきものと家族のいる家を持ちたいとダリウスは思います。小屋のなかには椅子がひとつ、暖炉があるだけで、トールメントは荷物を下すとすぐに暖炉に火をともします。

娘を誘拐したのはあのシンパスの息子で、シンパスの父親もこのトラブルを歓迎していない様子です。ダリウスたちにどこを探せばよいのか示唆することで娘を奪還させ、息子から完全に娘を取り上げようというつもりのようです。

ダリウスはこのことは私たちだけの秘密にして、人間の仕業ということにすれば、娘を破滅させずにすむ。娘も自分の立場が脆いものだと自覚があれば、黙っているだろうと語ります。ただ娘はどんな状態だろうか・・・。

第47章 ジョンのおなかが大きく鳴ったので、ゼックスといちゃつきながら、手話のアルファベットを教えながら、シャワールームから倉庫に寄り道しつつ台所にいってターキーサンドイッチを作って腹ごしらえします。Zが顔を見せて、呼びに行こうと思っていた、ラスが集合をかけていると知らせてくれます。急いで王の書斎に向かうと兄弟たちやクインがいました。ゼックスの雰囲気は初めて会った時のように戻っていました。ラスに言われて、Vが携帯電話の操作するとラッシュからのメッセージが流れます。「RR149の農場で4時にレスニングソサエティの入信式があるから教えてやろうと思ってな。夜明けとともに襲えば、やつらは吐きまくっているところだろうよ。ゼックスの味がまだ口に残っているぜ」ラッシュの意図を掴み切れず議論が交わされますが、ゼックスが自分がいまから偵察に行くと申し出ます。自分は使い捨ての存在だし、兄弟のような貴重な存在を何が待っているかわからない場所にやみくもに送り出せるものではないでしょうとラスに言うと、ここは俺の館だ、口をつつしめ、お前の王のリヴェンジの意見はどうなんだと言います。リヴは死ぬつもりなのかと心で問いかけると、ゼックスは邪魔したら一生許さない、と心の中で言い返してきたので説得を諦めます。武器を頼みたいというと、ラスはVに用意するよう指示します。ゼックスが部屋を出ようとすると、ジョンは腕をつかんできますが、理由はわかっているでしょう、私は守られているだけの存在じゃないの。愛しているというなら行かせて、と小声でいうと、ジョンは青ざめて手を離します。

第48章 誰もバックアップできない時間帯に危険がひそむ場所に危険なヤツを見つけ出しにゼックスが出かけていくのかと思い、ジョンはリヴに突っかかっていきますが、お前よりも俺の方が彼女とは長い付き合いだ。止めて止まると思うか。態度に気をつけろ、というとあれは俺の女だとジョンが言い返します。ラスがわかったわかった、オービュッソン織に血のシミをつけたらフリッツになじられる、と二人の間に割って入り、緊張感が緩みます。お前が彼女を愛しているのはわかっているが、容易いことじゃないぞ、これについては信じてくれとリヴが助言します。

身支度を整え、SWATのように武装したゼックスが玄関に現れ、ジョンの横を通り過ぎていきます。まるでシャワールームでのことがなかったかのようでした。Vは十分に武装させて、携帯も持たせたと言ってジョンの肩をたたき、行ってしまいましたが、玄関を見つめる目をそらすことができません。

トールが映画でも観ないかと誘ってきて、ゴジラをつけてくれます。ジョンはいま彼女を追いかけたら灰になる、でもゼックスのそばいたいという猛烈な思いを抑え込みつづけ、しばらくするとウェルシーが元気だったころのように、トールと並んでテレビの前に座っている自分に気付きます。自分の女が自分抜きで危ないことをしているかと思うと・・・背中に名前を彫ったからといって彼女が自分のものになるわけじゃない。実際には自分が彼女のものってところだ。意味が違う。つまり彼女は彼の元を静かに去れるってことだ。

クインは部屋に戻ってくると頭をすっきりさせるために化粧室にいき顔を洗います。ブレイからのサクソンと一緒にいる、夜明けには帰るというショートメッセージにイライラしています。ブレイはいつも部屋を綺麗に片づけていてフリッツをがっかりさせ、テーブルマナーは伯爵のようで・・・サクソンにぴったりだ。入れ墨店の受付嬢とヤッたときのことを思い出します。ブレイがこちらを見ていることに気付いていました。クインは見られていることに興奮していて、相手が誰かを思い出すために無理やり彼女の目を見ると、彼女は気が付いていませんでしたが、気持ちが萎えてしまっていましたが気持ちのよいふりをしていました。クインは鏡の中を覗き込み、嘘で固めた人生を生きていると感じて腹がよじれます。オッドアイだということで、実の父から疎まれ、兄妹に邪眼だと避けられ、普通の人生を強く望んできました。育ちの良い女性を娶って家庭を築けば絵にかいた幸せが得られる気がして。ブレイとの人生はそうはいかない。一度でも関係を持ったら、二度と引き返せないとわかっていました。

「戦士の君?」しまった、まだライラがベッドにいたんだった。

第49章 ゼックスが目的の農場の近くに実体化し、離れたところから様子を観察していると、パトカーが5台ほど停められていて、警官たちが動き回っていました。農場の建物のなかは血しぶきが飛び散っていますが、16人分の死体は人間の目からは隠されているようです。ホセ刑事が捜査に来ていました。

フランス風の調度で美しく整えられた寝室で、ブレイはベッドに横たわるサクソンに付き添っていました。「一緒にシャワーを浴びたらよかったのに」とからかわれ真っ赤になってしまう反応が隠せず恥ずかしいですが、サクソンは嬉しそうです。君は戦士の身体を持っているが、哲学者の心を持っていて、そんな絶妙な組み合わせが魅惑的だ。この怪我で一ついいことがあったとすれば、思い描いていた展開とは言えないが、君が寝室にいてくれることだと言います。身動きするのも辛そうなのは見えないところに傷がもっとあるか、サクソンほどの血筋があって回復が遅いのは身を養っていないからと気づき、手配するからといって電話をかりて連絡します。日没まであと残り7時間、ゆっくり過ぎてほしいのか、すぐに過ぎてほしいのか自分の気持ちがわからず内心落ち着かないブレイは、椅子で仮眠させてもらう体勢を整えましたが、サクソンが今は君を襲うような体力もないし、君の名誉を軽く考えてもいない。寒いんだ。体温を分けてくれないかと言われ、ブレイはゆっくりと持ち上げられたシーツのなかへ滑り込みます。身じろぎしてうめいたサクソンの額に腕をやると、自然と彼を腕枕する形になり、彼のふさふさしたブロンドをゆっくりと撫でると、サクソンが天国みたいだとため息をつきます。

第50章 ゼックスが振り返ると、イアンとトレズがやってきていました。リヴから連絡があり、駆け付けたそうです。怒るゼックスに一生ぶりに会った気がするのにハグもしてくれないのかとトレズが言うと、ゼックスは悪態をついた後二人をかたく抱きしめます。感傷に浸るような場所でもタイミングでもないから、話はあとで。集中して。

カラフルに塗装された車がやってきて、レッサーが運転してきていたのをみて、40ドルかけてもいい、あれが新しいフォアレッサーだ、とゼックスが断言します。監禁されている間に観察してたけど、ラッシュがあんなタイプを副官にするわけがないから、たぶんレッサーのなかで配置換えがあったんだと悟ります。イアンにあいつを追いかけてと頼みますが、お前が死なないように守るのが役目だから離れないと兄弟は言い、ゼックスはイアンから携帯を借りて館に連絡を入れるとVにナンバープレートを追跡してほしいと頼みます。

ラッシュは自分の腕の一部がオメガのように黒い影のようになったことに気付きます。

第51章 警察がいなくなると、ゼックス達は建物のなかをくまなく見て回りますが、何も見つけることができず、誰かがくるまで近くで張り込もうということになります。ゼックスはジョンのことがどうしても心配になり、館に一度戻ります。

ジョンの部屋に行くと、彼はシャワーを浴びていました。ゼックスがノックをすると、出てきますが、シンパスの感覚で彼が彼女に対して心を閉ざしてしまったことがわかり、心を痛めます。部屋を飛び出そうとすると、ジョンに腕を掴まれ壁に追いつめられます。7時間も俺を屋敷に閉じ込めておいて、俺がどうなっているかた見に来たのか。面白がって感情を食いものにしたのか。あれだけのことを共有したのにと責められます。君にラッシュを殺す権利があるように、俺にも権利があるってわからなかったのか。一緒に組んで、奴を追いつめよう。ゼックスはわかったと言います。ジョンが静かになると、この件が終わったら、別の道へ進もうと言い、ゼックスは体中の血が抜けていくように思えましたが、口ではわかったと言います。

ジョンの雰囲気が一変して、身を養いあい、熱く愛を交わしますが、ゼックスはその一瞬一瞬を大切に記憶に刻んでいました。この関係は一時的だから。

第52章 ゼックスは俺のパイロカントだ。でもこれ以上拷問が続くようなら命綱でも切ってみせる。なぜ消えないインクで入れ墨をいれてしまったんだろう。唯一の救いは背中にあっていつも目に触れるわけじゃないってことか。

ゼックスはシャワーを浴びながら、死体は彼女と同じ方法で隠されていて、警察が捜査に来ていたことを話し、これからラスに報告に行くと話します。ジョンは陽が落ちたら一緒に行くぞと言います。

ライラは厳密にはまだ無垢でした。クインはライラの瞳に星が輝いているのを見て、彼女は彼の理想の相手の条件にあてはまりますが、心が動かず、できませんでした。すでに彼女は夢中になりかけていて、肉体関係は状況を悪化させてしまうのも躊躇する理由です。

ブレイがサクソンを連れて帰ってきました。クインは最初腰を抱き合っている様子をみて頭に血が上りますが、サクソンが怪我をしていることに気付きました。次に王の館に連れてくるなんてと思いますが、ラスがジョージと一緒に階段の上に姿を現します。世話になった経緯があるから、館を訪問してくれてかまわない。じきに巫女も来るだろう、と言って書斎に向かいそこでゼックスやジョン、Vたちと打ち合わせを始めました。フリッツがブレイの部屋の近くに部屋を用意してくれ、サクソンはそこに落ち着きます。巫女はセレーナが来てくれることになったようです。クインはブレイを部屋の外に呼び出すと、なんでここに連れてきたんだ、お前の恋人だからかと責めると、巫女を呼ぶのにフューリーは安全な場所でなければ許可を出さないだろう、それに恋人かどうかはお前には関係ない、ほっといてくれと睨み、ドアの向こうへ消えました。

第53章 ラッシュは目覚めると二人組の人間の車上荒らしに襲われていました。返り討ちにしましたが、エネルギーが枯渇し、身体がボロボロになったため、トランクに入れてあった薬を使うことを思いつきます。取引のためにミスターDがきちんとケースに収めたままの状態でした。気分がハイになり、レッサーを作りまくり、オメガに復讐するぞ。警察がなんだ。兄弟団もぶっつぶす。金が必要だ。意気揚々と農場に向かう途中、いいことを思いつきます。

農場の近くの森で集合したジョン、ゼックス、クイン、V、ブッチ、レイジ。イアンたちは夜の仕事に戻っていますが、ゼックスが一声かければ応援に駆けつけることになっています。監視していた間に、ホセ刑事が再度捜査に戻ってきたようです。ブッチたちが再度家の中をみにいきますが、何もありません。ただしジョンも、ゼックスも、あのときのように、隠されていることが感じ取れます。街のほうからレッサー達をのせたグレー×黄色×ピンクの派手なカラーのシヴィックがやってきます。彼らが家の中に入っていくと、ブーツがガラスを踏み潰すような音がして、ガラスが派手に割れる音がして、フォアレッサーが窓から飛び出してきました。興奮して、お前らは俺の軍隊だ!コードウェルを征服するぞ!と叫んでいます。

Vが「カウント3」とつぶやくと、ゼックスが「1、2、3」とカウントダウンを始めました。

第54章 ダリウスとトールメントは海辺の屋敷に突入し、女性ヴァンパイアをつれた若いシンパスを納屋で追いつめました。彼女を殺してやる!と刃物を取り出したシンパスにダリウスは落ち着け、彼女を返せばおまえを殺したりしないと説得しようとしますが、彼女は俺の伴侶だ、奪われるくらいなら殺してやる!と狂乱状態です。トールメントが静かに追いついてきて、ピストルで狙いを定めようとしているのをダリウスは見て取りますが、彼女とシンパスとの間に距離がなさ過ぎて誤射の危険が高いためピストルは難しいと思って説得を続けようとしますが、バン!と音がして発射されてしまいました。彼女に当たってしまったんではないかと急いで駆け寄ると、シンパスの額の中央がきれいに撃ち抜かれていました。彼女の服には新旧の血痕が付着して、顔は血の気がなく真っ白でした。ダリウスが、もう安全だ、家に帰してさしあげると言うと、彼ではなく私を撃ってくださったらよかったのにと言います。

第55~56章 ゼックスは1と言うが早いか、農家の中へ実体化し、レッサー達のなかに切り込みます。兄弟たちも乱戦に参戦してきて、肉弾戦となりました。ゼックスがナイフを振るい、止めを刺そうとするとブッチが割り込んできて、レッサーを吸い込みます。驚いたゼックスが凝視していると、ジョンの口笛が聞こえ、その直後に切りつけられましたが、避けることができました。その後はブッチがゼックスの後ろについて、彼女が切りつけ、ナイフを突き刺したレッサーをブッチが灰にしていきます。逃げていく相手をみつけて、ゼックスが非実体化し、出口の外で逃がさないよ、といって足止めします。ゼックスを見失ったジョンは相手をしているレッサーを慌てて倒して出口に向かいますが、ちょうどゼックスが逃げ出したレッサーにすごいタックルを決め、押さえつけて攻撃していました。ゼックスは実のところ戦闘を楽しんでいました。ジョンが攻撃してきたレッサーを抑えていると、パンという音がして、足に力が入らなくなりました。ゼックスが見たときにちょうどピストルを構えたレッサーが見え、ジョン、振り向くなよと念じながら、ナイフを投げ、レッサーの左肩に当てたことで、狙いが少しそれてくれたようです。激怒したゼックスはわたしのものによくもやってくれたな、と撃ったレッサーに近づき、頭の中にある悪事をあさり、彼の中の恐怖と後悔をかきたてます。恐怖で悲鳴を上げ、逃げ出しますが、彼は壁に自分で頭をぶつけ狂乱状態ですが、ゼックスが近づくと跪き、彼女のナイフで自分の内臓をえぐり、彼女にそのナイフを柄を先にして差し出し、死にました。気が付くと周囲は静かになっていました。ジョンは彼女がシンパスの能力でやってのけたことに驚いているようです。

Vが光って、死にそうなブッチを癒しています。ゼックスがジョンを帰宅させるのに足が必要だと言うと、クインに戻ってもらってハマーを持ってきてもらうことになりますが、ジョンがまだ戦えると抵抗します。ゼックスがお前との誓いを破ったりしない、私も一緒に帰ると言いますが、ジョンは痛みを無視して現場の死体の数を確認しに戻ろうとします。立ちふさがったレイジが、やあ、おとなしく帰った方がいいぞと言いますがジョンが同意しないと、いきなり吹っ飛ばされ怪我をした部分を強打されます。ゼックスはそこまでしなくてもというものの、ここまでしなきゃ言うこときかないだろといって、ジョンをハマーに運びます。死体の数は16、ブッチが吸い込んだのが14体、ゼックスが始末したのが2体でしたが、フォアレッサーは取り逃がしたようです。

どこかの時点でジョンは気絶していたようで、気が付くとハマーにのっていて、レッサーの血にまみれ、窓越しの光がちらちらと照らすゼックスがきれいだと思います。根っから戦いを楽しんでいて、完璧な女だ。ゼックスはあんなことをして、嫌になった?と聞いてきます。ジョンは痛みをこらえて首を振ると、ショックを受けているように見えたら、あなたの種族ができることを初めてみたからだと言います。私の種族? 私のって言われても、いつでも私はどんな種族にも属していないと思って生きてきたからとゼックスは言います。どこにも所属していないという感覚はまさにジョンが感じているのと同じで、ふたりがぴったりと感じる理由がまた増えました。天よ、これ以上俺たちがお互いのために生まれてきたというサインを送るのをやめてくれ。だって、俺らは結局離れ離れになるのだから。

ゼックスに、帰って治療してもらったらすぐにあなたのなかに入りたい、と手話で伝えると、ゼックスから香りが漂ってきて、その計画に賛成してくれたことがわかります。

第57章 グレッグは珈琲マグを両手にもって部屋に入っていきました。君の好みにあわせてミルクコーヒーにしてあげたかったんだけど、普通の牛乳がなかったから、台所に行って粉ミルクを好みの色に近くなるまで入れてみたんだけどどうかな、というとホリーは自分の好みを覚えていてくれて、手間までかけてくれるなんてと驚きます。グレッグは自分のなかの何かが変わって、彼女が前よりセクシーで賢く見え、今までの人生では確実なのはお金だけだった、この仕事のあとはどうしようかと思います。撮った動画をホリーに確認してもらいながら、実は髪を染めているんだ、と告白するグレッグ。ホリーは噴き出しますが、彼女は秘密を話さないだろうという気がしています。何かを思い出そうとするたびに頭が突き刺すように痛みますが、誰かが彼を正しい道に戻してくれたようで、愛してると告白します。ホリーも愛しているわと言ってくれます。今回は彼女を手放したりしないぞ。

第58章 ジョンは手術室に運ばれ、つきそっているゼックスは医療器具とステンレスに囲まれ、緊張感で歩き回らずにはいられません。ジョンが大丈夫だから、外で待っていたらというので、出ようとしますが、ジェーンが恐怖症を克服するにはいくつかアプローチがあって、実際のところ目で見て体験するというのも効果的なの。よければ治療をそばでみていて、我慢できなくなったら外に出てみることにしたらと提案してくれます。

麻酔ガスをかけられ、ジェーンが人間とヴァンパイアの身体の違いなどを解説しながらてきぱきと手術を進めていきます。ゼックスは地面が船の上にいるときのように揺れているように感じながらも、なんとかそばで治療の様子を見ています。ジョンが目覚めた時にあなたの顔をみたら安心するから、そばにいてあげてといわれ、心を読んだのかとゼックスは驚きますが、たくさんの家族の患者さんたちを手術してきたからとジェーンは言います。8分後に目覚めたジョンはゼックスをみると握った手をゆっくりさすり、大丈夫かと彼女の心配をしてくれます。

彼女は自分がナイフの達人ということを自負していましたが、ジョンの命が危ないと思いナイフを投げた瞬間ほど、その技術を持っていてよかったと思ったことはありませんでした。あの一瞬で、ジョンがいなくなっていたかもしれないのです。永遠に。その可能性が頭をよぎるとゼックスにパニックが舞い戻ってきました。この件が片付いたらわたしたちは別れる。でも彼が息をせず、笑わず、戦っておらず、彼が周りのひとに親切を施していない世界に意味はある? 

どうした? とジョンが口の動きで聞いてきますが、ゼックスは何でもないと首を振ったものの、真っ赤な嘘でした。

第59章 ダリウスは娘を馬車に乗せ、トールが手綱をとり、屋敷に向かいます。娘はシンパスの若者に奪われてから月のものをみていないので、妊娠していると告白します。私にはもう戻る家も家族もないと言い、帰れないと訴えます。家の近くまできて馬車が停まると、娘は駆けだします。ダリウスは彼女は身体が弱っているため遠くまで行けないと判断し、転んだところで助け上げます。先に父上に救出の知らせをしてくる、待っていてくれと馬車まで送り、トールメントに護衛させて、邸宅に向かうと、シンパスの父親が来ていました。なんでことを荒立てるようなことをするんだとダリウスが怒ると、息子を殺したか? と聞いてきます。それなら私は息子を殺され、あいつの娘は破滅した。これなら五分だといって出ていきます。ダリウスはとシンパスにとびかかりますが、非がないわたしをお前は殺せないだろう、せいぜいあの娘が長生きしてできるだけ長く苦しんでくれることを祈るといって消えます。父親に、お嬢さまを無事に救出しましたと報告すると、お願いです、お支払いしますので、どうか彼女をどこかへ連れて行ってください。ここに連れて帰られたら妻も私も破滅です、とすがられます。ダリウスは嫌悪感で、お前は父親だろう!と怒ります。屋敷を出ていくダリウスの背中にむかって、「お金を! お金をお持ちください!」と父親が声をかけてきます。娘のところに戻ると、私をどこかへやってくれと言われましたでしょう、と言われます。私が君を守る、それが正しいことだからとダリウスが申し出ると、娘はあなたはヒーローですね。でも施しはありがたくないです。ともあれ一行はダリウスの家に向かいます。ダリウスはリッチではないものの、ぜったいにあの父親からは金をもらうつもりはないようです。

第60章 ジェーンはジョンにしばらくは安静にと注意事項を伝えていますが、聞き流していて、ゼックスと二人きりになることだけを考えています。ゼックスに支えてもらいながら、手術室を出ると、トレーニングルーム奥のロッカールームに二人きりになり、絡みあいます。

ブレイはフューリーがセレーナに付き添って来てくれたため、彼らを残してサクソンの部屋から出てきたものの、手持無沙汰で、屋敷をうろついていると、帰宅して血まみれのクインに行きあいます。何をしたんだと驚くと、お前に関係ないと振り切っていこうとするので、寝室のシャワールームまでついていきます。クインはサクソンをリンチしたゲイフォビアを病院送りにしてきたようです。なんてことをと怒るブレイに、もしデートしたあとにサクソンに何かあったら、お前立ち直れないだろうと言われ、この馬鹿野郎、完璧な理由で間違ったことをしやがってとブレイは思います。「愛してる」と水音にかき消されるくらいの静かな声で告白します。俺はシャワーを浴びて寝たいんだよ、とシャワー室を追い出されると、ブレイは部屋で脱ぎ捨てられたクインのTシャツを抱きしめ呆然とします。クインが出てくる気配がして慌てて部屋を出ようとすると、ライラのものと思われる白いローブの紐がシーツに絡まってベッドに落ちていました。ブレイは意識的に決断したわけではありませんでしたが、サクソンのいる寝室をノックすると、ちょうど彼らが帰ったところだよ。どんな具合か見にきてくれたのか? 見てくれと誘われ、ブレイは指の関節がきしむくらいドアノブを固く握りますが、部屋に入ると靴を脱ぎ捨て、鍵をかけます。

第61章 パインは書の聖母のところへいき、聖域から追放してくださいと懇願しますが、出せません。あなたの運命なのですと拒絶され、書の聖母は消えてしまいます。イライラしているところにラスがあらわれ、荒っぽいスパーリングをしかけ、戦いますが、はずみで飛ばされ大理石にぶつかり、背骨が折れる音がして、痛みが走りました。

第62章 ラッシュはトランクの中にある薬を餌に、麻薬の売人を4人捕まえてレッサー化しましたが、手持ちの在庫には限りがあるため、以前ミスターDに交渉させていた地域の麻薬取引の大物のひとりルージュモントに連絡を取ります。彼を脅して、かれから薬を巻き上げます。

クインは自分のことを好いてくれるライラのことを考え、ブレイのことを考え、話したくなってブレイの寝室に行きますが、誰もいません。サクソンに割り当てられた客室に行き、耳を澄ませると規則的な音が聞こえてきて、何の音だかわかったとたんはじかれたようにその場を離れ、どこに向かうか気にせずに足を動かし、王の書斎の前で振り返ります。胸が撃ちぬかれたように痛むので、血の跡があるのではないかと思って。

第63章 ゼックスは悪夢にうなされ、悲鳴をあげて飛び起きます。ジョンはシャワーを浴びていたようですが、驚いてピストルを手に飛びこんできて、警戒態勢で部屋のなかを見回します。Zが悲鳴を聞いて様子を確認しにきてくれたので、ジョンが対応してくれ、ゼックスは自分を落ち着かせます。ジョンの手術で昔のトラウマが再燃したようです。

ジョンは無理に事情を聞きださず、黙って抱きしめ、髪を撫でてくれ、ゼックスは自然と昔あったことを話しだしました。人間に捕まった時に、人間の血だけで生きられないかネズミのように実験台にされていたことがある。大体の医者は親切だったが、一人だけサドな奴がいて、1,2か月くらい捕まっていたが、すきをみて逃げ出して、研究所は焼き払ってやったと話します。聞いてもいいか、私と一緒に街を見に行ったときのこと、あれより前に行ったことがあったか?と言うと、ジョンは首をふって、俺は後ろよりも前を向いて生きていたいからと言います。ゼックスはうらやましい、過去が無視できたらいいのに。ジョンといるといとも簡単に守られる立場に落ち着いてしまうことに気付いて、悪夢を見た時よりも更に大声で悲鳴をあげたくなりました。最後には自分よりあてになるやつはいないと人生に学んできたはずなのに。このままずっと一緒にいられたらいいのにと思いつつ、熱いシャワーが浴びたい、といってベッドを出ますが、「愛してる」と暗い影のなかで口だけで伝え、ジョンの頬に手を当てて彼の顔をじっくりながめ、おそらく最後のキスをします。シャワー室で彼女はほぼ元通りになった自分の身体を眺め、自分の身体を今まで道具程度にしか感じず、道具のように手入れをしてきましたが、ジョンが慈しんでくれたことで、見方が変わったように感じます。

ジョンが入ってきて、ゼックスが誘い、たちまち二人は絡み合いますが、絶頂に達したときにゼックスの視界が赤に染まりました。痛みを与える道具が必要だと言うと、ジョンは保管してあるから取ってくると言い背中を見せると、ゼックスが彼女の名前の入れ墨をみて驚きます。いつ入れたんだ?と聞きますが、ジョンはいいたくなくてシャワーに入ってしまいます。ゼックスはバンとガラス戸をたたき、いつだ?と追及すると、あなたがもう帰ってこれないと思ったときだと答えます。あなたの道具を取ってくる、と急いで部屋を出ると、Zが声をかけてきます。

挨拶をすると、彼の目が黒くなっていて深刻な話があるのだと悟ります。ラスが俺にお前と散歩しろと言ったのは理由があったんだ。ジョンは押しつけがましくない彼のアドバイスが的確だったことを思い出します。俺もお前と同じなんだよ。ジョンは、彼が言っていることが、自分の想像通りなのか、まさか違うんではないかと思いますが、Zはそうなんだよ。こんなこと知らせないでおけるならそうしておきたかった。それにお前の女もだ。あの悲鳴を聞いて気付いたんだ。俺は自分のことは放っておいてほしいタイプだし、人の事情にも首を突っ込みたくねぇ。だけどお前の彼女には助けが必要だ。もともとの事情に加えてラッシュの件がある。安全になると、ますます悪くなる。俺にとってはベラが救いだった。彼女が攫われて、いい意味で俺のケツを蹴りあげてくれた。俺に正しい方向へ向くようカツを入れてくれたんだ。それで俺は信頼できるある人にすべての事情を話すことにした。俺のことを汚いとか、弱いとか思わないでいてくれる相手に。レイジの伴侶のメアリだ。もしあの女性を連れ合いにするなら、彼女を助けてやらないといかん。彼女は話すことで、汚いものを身体から出さないと。メアリに名前は出さずに聞いてみたら、話を聞いてくれると言っている。ゼックスにメアリと話すように言うんだと助言してくれます。ジョンがお礼を言うと、Zは俺は売女を殺して、頭蓋骨を持って帰ってきたよ。お前は復讐して満足を得たか、と聞かれジョンはそうできていたらと思うと言います。Zはお前に嘘はつかない、復讐は心の助けになったよ。というと拳を突き出して、挨拶しあうと彼の瞳は黄色にかわり、去っていきました。

ジョンはいったん寝室に戻り、ゼックスの道具をベッドに置き、トールの部屋へ向かいました。ひょっとして、入れ墨屋やエクストリームパークについてきていた?と聞きます。ウェルシーが本当に俺を必要としていたときに、そばにいてやれなかった。同じ失敗をしたくない、と見守っていた理由を話します。なんでウェルシーの復讐を優先しないんだというと、生きている奴優先だ、ラッシュの件が片付いたらもちろん復讐もする。お前の女を取り戻せて本当によかった。俺の女じゃない、というとお前の女だよ。二人とも感じているんだろうと重ねてトールに言われ、俺たちはお互いのためにいるっていうことかとジョンは思い、彼の中の奇妙な形で固まってしまっていたと感じていた人生が、調整され、収まるところにおさまったという感じがします。悪いことは起こるものだ。でも前進しなくては。ジョンはトールに今まで酷い態度を取って悪かったと謝り、一緒に来て、ラッシュを倒すとき側にいてほしいと頼み、トールは頼んでくれないかと思っていたよと答えます。

第64章 クインがバルコニーに出ると、ブレイも出てきました。ぎこちなく挨拶したあと、大丈夫だったか。彼はお前を正しく扱ってくれたかと聞くと、よかったよ。正しい感じがしたとブレイが言います。お前が幸せならそれでいいんだ、夕食の後でな。気を付けてといってクインはその場を去ります。

ゼックスはシャワーを浴びながら、入れ墨のことを考えていました。指輪はなくすかもしれない、証明書は破れたり、焼けたりするかもしれない、でも入れ墨はどこへ行くんでも一緒だ。以前はドレスアップして綺麗な化粧をした優しいタイプの娘はどうでもいいと思っていた。女らしさは弱さの象徴だと。でも彼女たちの男は生きている限り彼女の名前を背中にしょっているというプライドを彼女たちは持ち合わせていることを、ゼックスは認めようと思います。ジョンは立派なヘルレンになるだろう・・・。クソ、ジョンは今後伴侶を持ったら、その女性にゼックスの名前が背中にあることをどう説明するつもりなんだ。

書斎に兄弟団とクインたちが集合していますが、招集したラスが戻っていません。トールが何らかの事情があちら側であるのかもしれないが、時機を逸するのは王も望まないだろう。出かけるぞと決断します。ジョン、ゼックス、Z、クイン、ブレイ、トールがストリートレーサーたちが集まる通りへ向かい、残りの兄弟たちは農場とエクストリームパークの間くらいの地域に向かうことになります。

第65章 大理石の床に横たえられたパインは腰から下の感覚がありませんでした。書の聖母がそばにいましたが、パインは治療を拒否し、このまま死のうとしています。ラスが声高に理不尽なことをいうな、治してもらえ、と説得していると、母上の監視のもとにはもういたくない!と反発して、ラスは初めてパインがヴィシャスの兄妹だと知ります。お前を死なせたりしないぞ! 俺にお前を助けさせてくれるか? 書の聖母、俺が助けることをお許しいただけますか! 詰め寄るラスに、好きになさい、そばにおらずとも生きているほうが、この床で死んでいるよりもよい、といって書の聖母はいなくなります。ラスはこちらの世界にパインをうつし、ここで待っていろよといって、いそいでジェーンを呼んできます。ジェーンはパインを一目見て「なんてこと」と驚きをみせます。ヴィシャス。パインは200年前に亡くなったはずの双子の兄の名前が出てきて驚きます。なぜ亡くなったものの名前を? 彼が死んでおらず、彼女の伴侶だと聞かされ、パインは激怒し、書の聖母を殺してやると誓います。

第66章 ジョンたちが向かった地域には人もレッサーの気配もなく、空振りかと思われますが、ゼックスが自分の身体の血でラッシュが近くにいることを感じ取り、駆け出します。他のメンバーもついていきますが、ゼックスが駐車されているラッシュのメルセデスを発見します。ラッシュは見当たりません。ジョンは車のフロントガラスを粉砕して、わざと盗難防止装置を作動させます。残りの兄弟たちも呼び寄せます。

ラッシュは薬を巻き上げて車に戻ろうとするところで、盗難防止ブザーが鳴りだしたことに気付きます。急いでもどるとゼックスがいることに気付き、彼の中のヴァンパイアの部分が一気に独占欲で燃え上がります。

第67章 ラッシュのことを麻薬の組織の軍隊が襲ってきて、兄弟団との乱戦になります。ゼックスは姿を現したり消したりしながらラッシュのそばに忍び寄り、後ろから首を搔き切ろうと背後に立ちますが、その瞬間、銃撃戦のまっただなかで自分をかばうことなく絆の匂いを強く漂わせ、仁王立ちでラッシュを狙うジョンの姿が見えました。ラッシュは手にエネルギーをあつめ火の球を投げようとしています。

このままでは恰好の標的になってしまう。彼女はラッシュへの復讐よりジョンの命を選び、ラッシュの下半身にタックルしていきます。火の玉はジョンをかすり、ゼックスはラッシュともみあいになり、抑えつけたと思ったら非実体化ですり抜けられ、手首を抑えつけられてしまいます。ジョンが死んでいないことを確認すると、私を攫って生きなさい、とラッシュにささやきます。言われなくてもそのつもりだ、とナイフを首にあて、ゼックスを引きずり始めます。こんなシーンを昔、みたことがあると感じるジョン。横でピストルの発射音がして、ゼックスに当たってしまう! だめだ!とジョンは声のない叫びをあげます。肩越しに振り向くと撃ったのはトールでした。ジョンはゼックスに駆け寄ると、鮮血の匂いをかぎとります。ラッシュは首だけでなく、腹にもナイフを当てていたようで、ゼックスに突き刺していました。

ラッシュのことは兄弟たちが囲んでピストルで狙いをつけ、ブッチ達がいま向かっていると言います。ラッシュが、俺は彼女をヤッてやったぜ。激しいのが好きだってさというと、ジョンは彼に黒い剣を突き刺します。彼女は懇願したんだぜ・・・ゼックスは「私は絶対にそんなこと望んでいなかった!」「絶対!」と吐き捨てます。

ジョンは自分が乱暴されたときのこと、Zの話、トールのこと、そして昔間違った理由で違う女性が破滅してしまったことを思い出します。とどめの一撃を最後の一瞬でラッシュの顔の横に逸らし、彼の中の絆を結んだ雄は抵抗しますが、ジョンは体勢をかえると、ゼックスのほうに黒い剣を差し出し、彼女に握らせ、その上から彼が剣を握ります。彼自身は正義を果たす機会を得られなかった。彼になされた過ちは永遠に正されない。トールになされた過ちも正されない、ウェルシーが戻ることはないから。でもZは自分で幕をひくことができた。そしてゼックスも。これがこの世で最後に彼女が行うことだったとしても。

ゼックスに力が少し戻ってきたようです。ラッシュは胸を大きくあえがせていますが、胸をかばおうと身じろぎしたため、ジョンが彼を抑え込み、ゼックスに止めを刺させてくれます。大きな音がして彼の姿が消えると、ゼックスの身体からも力が抜け、ジョンが抱きとめます。彼は死んだわ。

ありがとう、とゼックスはジョンに囁きます。彼女が本当に欲しいものを彼は与えてくれました。ジョンは彼女の手をひろげ永遠に愛していると指で伝えます。

第68章 ゼックスが目覚めるとそこはフェードではなく館の回復室でした。ジェーンやエレーナがいて、ジョンがのぞきこんできたので、ゴメンというとまた意識が遠くなりました。隣の手術室には誰かが運び込まれてきているようです。

パインが目を開けると、名もなき者がそばにいて驚きます。手を握って、あなたの気持ちを楽にしてあげたいというと、あなたにお仕えするために書の聖母の許可を得てこちらの世界に渡ってきたのですと伝えます。パインが私に仕えることは許しません、ここにいてもいいけれど、自分自身のためよというとわかりましたと受け入れます。

手術室の部屋がバンと開くと、ダイヤモンドの瞳をもつ男性がパインのほうへ向かってきます。ヴィシャス、私のお兄様。君は何者なんだ? ヴィシャスが聞くと、私たちは血族ですと伝えます。妹・・・? ジェーンは背骨の骨折は私の技術では助けられないから、なんとしてでもマニーをみつけてここへ引っ張ってくるわ。約束すると宣言してジェーンはフリッツと出かけていきます。

第69章 ゼックスが目覚めるとジョンがそばにいなかったので、よろよろと部屋の外へ出るとそこでジョンが壁を凝視していました。ゼックスに気付くとすぐ駆け寄ってきてくれ、手助けしてくれます。

なんでラッシュを仕留めさせてくれたの?と聞くと、ジョンは君が手を下すことが、君の中の事件に幕を引くのに必要だと思ったからと言います。いままでの人生で誰かが私にしてくれたことのなかで一番思慮深い判断だったと思う、ありがとう。お前抜きではなしえなかったと感謝します。ジョンは赤面します。

彼は彼女の敵を献上してくれた。彼はいつもいつも口にする前に彼女が欲しいものを差し出してくれる。「ジェーンかエレーナでも呼ぼうか、お腹は空かない?」またやってる。ゼックスは笑い出しました。身体の震えが止まらなくなり、次第に号泣になっていきました。ジョンがティッシュを握らせてくれ、しゃっくりあげる程度におさまってくると、ずっと言おうと思っていたことがあるんだけどとゼックスが切り出します。ジョンが身体を固くすると、あの四文字の言葉だと言います。ジョンも愛している、ごめん、ありがとうと伝えます。

今後のプランだけど、気持ちが変わったとゼックスが言い出します。お前の横でずっと戦いたい。シンパスと一緒にいるのってどうだろう?と提案し、喜ぶジョンに話しておかないとならないことがあると切り出します。昔恋人がいたことがある。今の私たちの関係とは違って、身体だけの関係。彼は兄弟団のメンバーでいいやつだったけど、シンパスだっていうことを伏せていたから、彼に公平じゃなかったと思う。彼はシンパスの植民地まで追いかけてきてくれたんだけど、真実を知って、姿を消した。兄弟団も抜けてしまった。生きているか死んでいるかもわからない。これが理由で、お前との関係に踏み込むことに抵抗を感じていたんだ。マーダーを失って死にそうな気分だったのに、お前への思いはマーダーとは比較にならないほど強いんだから。ジョンは事情を聞いて、腑に落ちる点もあり、話してくれたことは彼女にとってもよいことだと感じました。メアリのことを話題に出し、ゼックスも相談にいくと受け入れます。

彼の身体はクタクタですが、気持ちは満たされていました。ゼックスの横で身体を伸ばすと、ジョン? 私、あなたと伴侶になりたい。王の前で誓う公式な関係。とゼックスが言われ、ジョンの心臓は止まりそうでした。何て顔をしてるんだ、私がシェランになりたくないとでも思っていたの?といわれて、なりたいと思っているなんて思いもつかなかったと言います。俺が欲しいのはあなただけだ。何があろうとも。愛してる。君のヘルレンに喜んでなると言います。ゼックスは、それじゃ決まり、誓いましょうと言います。いま立てないじゃないかとジョンが言うと、支えてくれたらいいじゃないと言われ、彼女が立つのを手伝い、支えるよ。ずっと、俺だけの恋人。ジョンは不思議な力が二人を包み込んで永遠につなげてくれたのを感じました。

第70章 だめだ! だめだ! トールメントの叫びが聞こえ、ダリウスは新生児を腕にかかえていて、母親に何があったのかと思います。トールメントの隙をついて、彼の短剣を奪い、出産したばかりの母親が自分の腹に突き刺していました。彼女は彼らと過ごす間、無口でしたが、彼らのことを気遣っていることをダリウスは感じ取っていました。娘を置いていくな!と必死に声を掛けますが、亡くなってしまい、二人は悲しみにくれます。トールメントが彼女はリンゴの木の下に植えましょうと申し出てくれます。

第71章 トールは50年ウェルシーと住んだ家に久しぶりに戻ってきます。沢山の思い出が蘇り、辛い思いをしながら、ドゲンたちが運んでくれた材料で、ジョンが壊してしまった窓を補修し、家を見て回り、ガレージから車を出して走らせます。

第72章 ダリウスは赤ん坊を大切に思っていましたが、戦士たちが戦いに出ている間、赤ん坊を放っておくわけにいかず、誰かよく世話している人を探すしかないと決断します。ある一般人の家庭で、生まれたばかりの赤ちゃんが死産だったところがあり、そこへ預けることにします。ダリウスが名残惜しく思っているのを察して、先方の男性が後悔しませんか、と聞いてきますがあなたたちの子として育ててほしいと頼みます。一つだけ願いを聞いてもらえるなら、名前をつけさせてもらってもよいだろうか。ゼクサニアと呼んでくれ。一般の家に戦士が頻繁に出入りすれば、不要な注目をひいてしまう。彼女を守るには、彼女の人生とは距離を保たなくては。本当によろしいのですか?と念を押されますが、いいと言います。なにかこちらで出来ることはと言われ、彼女によくしてやって欲しいと頼みます。帰り際に、具合のわるそうな男性の妻が、すばやく赤ん坊に反応し、守るように抱きしめたのを見て取ると、後ろ髪を引かれる思いで二人は出発します。

第73章 ゼックスは順調に回復し、ラスからは兄弟団と一緒に戦ってほしいと頼まれ、新しい仕事が決まり、ジョンの部屋に完全に引っ越しました。暗殺者という職業柄、注目を浴びないようにしていたし、注目を浴びるのも嫌いなため、誓いの儀式でみんなの注目を浴びるかと思うと吐き気がするようです。おまけに衣装といえば革の戦闘服しか持っていないので、これで式を挙げるつもりです。落ち着かず、テレビをつけるとラズボーンの幽霊探偵シリーズ番組がうつり、そこにマーダーの肖像画がうつりました。しばらく観ているうちに、屋敷はチャールストンだということがわかります。生きているか死んでいるかわからないものの、すぐに飛んでいこうかと思いましたが、彼には彼女の連絡先を伝えてあるため、彼女に会いたかったら彼から連絡してくるだろう、寝た子は起こさない方がよいと思いなおします。

ノックがあり、トールが大きなルイヴィトンのスーツケースをさげてやってきました。辛そうな様子でケースを開けると、そこにはドレスが入っていました。なんでと聞くと、ジョンの姉が王に嫁ぐ際に着たものだから、ジョンのものだと説明されますが、ゼックスはトールの様子から彼の亡くなった妻ウェルシーの結婚衣装だと悟ります。そして彼がなんとなく自分を知っているような印象を受け、彼の精神を探りますが、彼はゴジラのことを考えて詮索をブロックしています。個人的な理由なんだ、というトールを追及していると、横から「なぜなら彼は最初にそこに立ち会ってくれていたから」と答える声が現れます。黒いローブで全身を覆った女性がいて、精神スキャンをすると、ゼックスが自分の精神とみまごうばかりの様子で、ゼックスは後ずさり、足が絡まり尻もちをつきます。この相似はまるで母娘のような・・・。女性がフードをおろすと、トールがなんてこったとつぶやきます。

お母さん。

あなたを出産したあの日、私は一度死んだのだけれど、フェードに受け入れてもらえず、書の聖母があちらの世界に受け入れてくださり、死の代償の苦行として巫女に仕えていて、ここに来たのも巫女に仕えるため。あなたのことはずっとあちら側から見守っていました。実のところ、ここへ来たのはあなたと個人的に会うためでした。あなたが怒るとしても理解できる。あまりにも遅すぎたかもしれないけれど、許されるならあなたに愛情を伝えたくてと言います。

ゼックスは瞬きして、判断に迷いますが、目の前の女性のとてつもない悲しみも伝わってきて、まだ隠された事情はあるかもしれないが、話されたことは真実だと悟り、これは運命が彼女の結婚式の日に授けてくれた祝福だと考えることにします。

ゼックスはゆっくりと母に近づいていくと、彼女は小柄で線が細く、性質も繊細だと気づきます。名前を聞くと名もなき者だと言います。口笛が聞こえてドアのところにベスに付き添ってもらってジョンがいました。手には宝飾店の赤いバッグを持っていて、明らかに彼女にプレゼントを買いに行っていたようです。ゼックスはジョンに母を紹介すると、母とベスに花嫁衣裳の着付けを手伝ってもらって準備を始めます。

第74章 ジョンは部屋を見回し、ゼックスの戦闘服が彼の服と一緒に並べられているのをみて、彼女が引っ越してきた実感がわいてきます。戦闘に出て危険にさらされることを考えると顔が曇りますが、彼女は戦士だから引き止めはしないと考えています。彼は父のダリウスとのつながりを感じて、引き出しから日記と、彼のシグネットリングを取り出し、嵌めました。ダリウスはこの結婚を喜んでくれると思う、彼は彼女のことを知っていたよとトールが伝えます。彼女が生まれて母親が死んだとき、彼女を大切にしてくれると思える育て親のところに連れて行ったのはダリウスだ。だからゼクサニアと彼女を名付けたし、彼女を愛していた。遠くから見守っていたんだよと教えられ衝撃をうけます。

1時間後、ジョンは階段の下で待ち受けていて、兄弟たちと兄弟の妻たち、そして特別ゲストとしてイアンとトレズが居並ぶなか、ゼックスが階段の上に現れ、彼女は夢のような美しさでした。Zが美しい声で歌い始めます。ゼックスが階段を降りてきて、盲目の王ラスの前で二人が並びました。愛してる、と口の動きで伝えると、ゼックスの口元のちいさな笑みが顔全体に広がっていき、口の動きで愛してると伝えます。ラスが二人を結び付け、書の聖母が欠席したため、この組み合わせはよいものですと彼が宣言します。そこから雰囲気が一変して緊張したものとなり、ジョンがラスにもらった宝飾ベルトとマントを外すと、ひざまずき、ラスが大きな声で「汝の伴侶の名は」と尋ね、ジョンは「ゼクサニア」と手話で答えます。兄弟ひとりひとりが彼の背中の入れ墨の名前の部分に古語で彼女の名前を刻んでいき、ジョンは少しも悲鳴が漏れないようこらえ、ゼックスを見やると、彼女は賞賛の眼差しで彼をみつめていました。塩が傷の上に盛られると歯を食いしばり、立ち上がります。兄弟たちは歓声を上げ祝います。トールが白い布をジョンに当て、箱に収めるとジョンはひざまずき、それをゼックスに捧げます。これを受け取ることで彼女はジョンを受け入れるという象徴の行為で、ゼックスは一瞬の間もなく受け取り、周囲で歓声があがります。ジョンはさっと立ち上げると、豪華な赤いドレスのゼックスを腕に抱きあげ、家族や兄弟たちの目の前で激しくキスをすると、そのまま階段をのぼります。祝いの食卓が整えられていましたが、彼らには先に楽しんでもらい、二人は彼らの寝室へ戻ることにします。

彼女をベッドに降ろすと愛情の印を贈るのは人間の習慣だけど、俺は人間として育てられたから。気に入ってもらえるかなとプレゼントを差し出します。細長い箱には、6カラットのダイヤがセットされたプラチナの太い鎖ネックレスが収められていました。彼が選んだ時のポイントは、彼女に目をとめる他の男がひるむくらいダイヤモンドが十分大きくて、光るかということだけ。万が一絆の匂いがかぎとられなくても、彼女がもう伴侶がいるという事実を知らしめるために。

指輪だと、戦闘にいくときに外さないといけないだろうから。ネックレスを気に入ってくれたなら、ずっとつけてもらえると嬉しいとジョンが頼むと、ゼックスはキスをして、ぜったいに外さないと約束していました。

ゼックスは私も入れ墨を入れようかと思うんだけどと言い出します。ジョンが首をかしげると、あなたの名前を背中に彫るっていうのはどうかしら? 大興奮したジョンの反応にゼックスが笑い出します。

神よ、俺は人生を愛してる。館にいる家族、それに世界の片隅にいる価値のあるみんなも。運命は気難しいこともある・・・でも正すことはできる。最後には、試練を潜り抜けた価値がある。(終)

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